2012年9月4日放送のテレビ東京系の「ガイアの夜明け」で「独占取材!いま話題の大行列デパ地下の仕掛け人」として、リニューアルオープン以来、毎日長い行列ができている大丸東京店のデパチカのプロジェクト責任者を取り上げていました。
番組タイトルは、「魅せて売る! 五感を刺激する売り場革命とは」です。
以下は、同番組の概要です。
東京駅に隣接する大丸東京店。
8月22日に地下の食料品フロアーがリニューアルされました。この様子は連日多くのメディアにも取り上げられました。
特に人気なのが弁当コーナー。調理の様子を見ることができるからです。
ひときわ客をひきつけているミート矢澤では、黒毛和牛のジューシーなハンバーグが弁当に。
一方、玉ひで からっ鳥では、創業250年の老舗料理店が揚げる鶏の唐揚げ。これも熱々のまま弁当に。
客の一人が、「目の前で焼いているのを見ると食べたくなるというのはあるので」とコメント。
この一大プロジェクトを仕掛けたのが、大丸東京店宗森耕二さん37歳です。
宗森さんから「やっぱり東京駅に来たら大丸で弁当を買って行きたいと。何かそういう印象づけられればいいな。」との話がありました。
連日大行列ができるデパ地下をいかにして作りあげたのか、そしてグルメなメニューをどう集めたのか。
今半の焼肉弁当らしきものを食べながら、宗森さん「こういうのを弁当でやっているところはないんじゃない?」
弁当店の店員、「これを弁当でやっているというのは絶対うちしかない」と。
ガイアのカメラだけが見つめたデパチカ大改造、その裏側に迫ります。
行列ができる老舗の名店、玉ひで、実は初のデパ地下進出にとまどいが。
玉ひで店主、「大丸、何がしたいのかと思うくらい・・・」と憮然な表情。
母と娘の手づくりアップルパイもデパ地下に、しかし、売り場作りには様々な困難が。
案内人 江口洋介
「今日は東京駅の地下街に来ています。すごい人です。このあたりにある東京おかしランドは、ここですね。今、話題のスポットらしいんですけど。今ここで行われている新たな試みが、デパートやスーパーでも試されています。」
「こちらがグリコです。なにかやっていますね。何をやっているのですか?」
グリコの店員「今、アーモンドチョコレートを作っているところです。真ん中の機械でチョコレートをかけます。すぐ食べられるような形で店頭に並べます。」
江口洋介「こちらがカルビーですが、カルビーといえばやはりポテトチップスでしょう。店頭のガラスが湯気で見えなくなっています。スライスした芋を揚げていますね。揚げたのをベルトコンベアで運んでいます。厚切りのペペロンチーノのポテトチップスが出来たてとなりました。まさに揚げたて感が。」
東京ステーション開発木下藍子さん、「おかしランドは今年の4月にオープンしました。大変盛況ですでに60万人のお客が来店されました。見て楽しめる仕掛けで存在感を示しています。お客様の反応が楽しそうだと嬉しいです。」
ガイアの夜明け今回は、客の五感を刺激して売る、そんな戦略をデパ地下やスーパーも取り入れていたのです。一体それはどういうものでしょうか。
東京駅八重洲口に立つ大丸東京店、今年10月の全面リニューアルに向けて改装工事が続けられていました。
大丸からほど近い銀座日本橋地区には大手百貨店がひしめき、競争は激化する一方。
大丸は2008年から売り場面積を1.4倍にする増築工事を始めました。激しいデパート戦争を勝ち抜くために、大丸は今回のリニューアルで特にグルメ・食料品に力を入れていこうと考えたのです。
大丸東京店藤野晴由店長「食品が売れなくなるとたちまちこの東京店はだめになってしまうということで、その集大成が東京店のリニューアルです。」
実は、大丸東京店の売上のおよそ40%を食料品が占めています。都内百貨店の平均は28.8%です。これは、東京駅を利用する客が弁当やおみやげのお菓子などを購入することが多いためです。
他の百貨店に比べて食料品の比重が高いのです。
しかも食料品フロアーにどうグルメなお客を呼び寄せるのか、そこに大丸東京店の生き残りがかかっていたのです。
そのプロジェクトリーダーが、大丸東京店の宗森耕二さん。会議ではフロア全体のコンセプトを確認します。
宗森さん「駅ナカではやっていない新しい東京の名物を」。
別の担当者「食べてみて美味しくてリピートで買っていただけるような売り場を。」
実は東京駅の地下はここ数年、駅ナカや新しい弁当売場が充実し、弁当を買い求める客の争奪戦が激しくなっていたのです。
駅ナカに負けない魅力的な売り場にするにはどうしたらいいのか、宗森さんにはすでにあるイメージがありました。
職業柄他のデパートや食品関係の店を見て回ることが多い宗森さん、ここ数年ある傾向に気づいていました。
それは調理する様子を見せる店が増えていることです。
例えば、ここは松坂屋銀座店デパ地下のキッチンスギモト。すき焼や牛丼がその場で食べられるイートインのコーナーです。
通路や客席から調理をしている様子を見ることができます。
客の一人「安心感があります。あそこでちゃんと作っているものが出される。」
何より美味しさが直に伝わります。
宗森さん「調理されているところをじかに見せているところが、心に一番響きます。」
調理しているところを見せながら売る、宗森さんはこれを弁当売り場で実現しようと考えたのです。
続いては店選びです。
見せて売る弁当を実現するためには、調理する過程が見栄えのする店に出店してもらう必要があります。
宗森さんが訪ねたのは、和牛を使ったハンバーグが人気のミート矢澤。
この店を訪れた最大の理由が、客席から厨房が見えることです。
料理人の軽やかな手さばきはもちろん、ハンバーグの焼ける匂い、音、煙まで。
厨房を見せることで客の食欲をいっそうかきたてているのです。
ミート矢澤の客「見えるっていいなと思う。こねてたりとか様子が見えたり、煙も見えて美味しそうだよね。」
まさしく宗森さんが考える見せる売り場にピッタリな店。出店してもらうことが決まりました。
宗森さん「空気を抜いてハンバーグをこねる、それを鉄板で焼くシーンが、一番その商品の特徴を伝えやすい。買っていただく前に、いかにお客さんの心を躍らせるか、それに一番適している動きをミート矢澤さんはされている」
大丸に出店する店が続々と決まり、地下フロアのレイアウトがほぼ固まったのが去年の秋のことです。
地下フロアの増床する場所には、弁当を売る店が55店舗入ります。
そして、調理する様子を見せる弁当店が12軒並びます。お肉を使ったお店が多いので、お肉の細道と名付けられました。
駅の改札から一番近い所にあのミート矢澤が配置されたのです。
続いて、それぞれの店の完成予想図も上がってきました。
ミート矢澤の特徴を聞くと、
宗森さん「商品の出来たてを見せられるガラスですね。」
ミート矢澤の店舗完成予想図で、宗森さんがこだわったのは、二面をガラス張りにして二方向から見えるようにしたことです。
さらに宗森さんは、グルメも驚く老舗の出店もしかけていました。
宗森さん「見た瞬間にからあげの店だと分かるお店に」
からっ鳥と言うから揚げの専門店です。
実は、この店を手掛けるのが、大行列ができていて江戸時代から続く鶏料理の老舗、玉ひでです。
自慢は代々受け継がれてきている親子丼です。軍鶏のしっかりした味とトロトロ玉子が人気です。
その親子丼の名店が大丸で勝負するのは、から揚げ弁当。
創業250年の老舗が初めてデパ地下に出店。そのためにからっ鳥と言う新しいブランドまで立ち上げたのです。
玉ひで八代目主人山田耕之亮さん「玉ひでが作るからにはから揚げも料理なんだと言うような主張ができるようなワンランク上のから揚げを作りたい。」
意気込む一方で八代目ご主人には戸惑いがありました。
玉ひでの店の造りは伝統的な日本料理店。調理場は文字通り裏方で、客には見えないように奥に置かれています。
そのため、ご主人は調理の過程をお客に見せるという感覚になかなか馴染めなかったのです。
八代目ご主人「味だったらわりかし自分なりに良いか、あまり良くないかは分かるのですが、外装とか店の造りとかには全くセンスのカケラもありません。全くわかりません。大丸何をしたいのかなって思うくらいです。」
8月中旬、リニューアル工事が進んでいた大丸東京店のデパチカ。地下食料品フロアの工事も終わりました。
売りは、肉の名店12店が軒を連ねるお肉の細道。全て厨房がガラス張りになっていて、調理の様子を見ながら弁当を買うことができるのです。
宗森さんは、それぞれの店の調理や販売の手順をチェックするためにお肉の細道にやって来ました。
真っ先に向かったのは、和牛ハンバーグが売りのミート矢澤でした。
宗森さん「思っていたより厨房が近いですね。什器とか設備しか見ていなかったので。実際調理の様子がよく見えますね。」と一安心。
しかし、フロアーを見て回ると、見せて売ることに不慣れな店もいくつかあります。
例えば、東京初出店の牛たんの店では、調理が見えるガラスの前物を置いていて、網のの上の肉が見えにくくなっていました。これは、店にお願いするとすぐに取り除いてくれました。
見せるということは、邪魔なものは見せないということでもあるのです。
手づくりアップルパイのマミーズでも、ショーケースに問題があり、ショーケースの棚が客によく見えるように客側に下に向くように斜めに付けているので、アップルパイを並べる時に滑り落ちてしまうのです。
店長「私は、棚を斜めにするのには問題があるので真っ直ぐにしたほうがいいと言ったけど、宗森さん的には斜めにしたほうがいいと」
実は、このショーケースは、焼きたてのアップルパイがよく見えるようにと宗森さんがわざわざ斜めのショーケースを特注していました。
するとスタッフの一人が、棚にすべり止めのシートを置くことを提案し無事解決しました。
8月22日、リニューアルオープン当日。
オープンを待ちきれない客がすでに列を作っていました。
午前10時にオープンすると、あっという間にフロアーは人でいっぱいになりました。
あのミート矢澤もハンバーグを焼き始めると早速お客が集まって来ました。香りと音に釣られ人垣ができます。
ここでステーキも登場。これには皆んな釘付けです。
客の一人「ステーキ買っちゃおうかな。大興奮です。ほんとに食べたかったのものをまさに今作ってもらっている」
別の客「じかに香りが伝わってくるので、すごい食欲がそそられます。」
一番人気は、ハンバーグ弁当1500円。次々に売れていきます。
中には、最高級のサーロインを使った贅沢弁当7600円も買っていく客もいます。
一方、から揚げの名店、玉ひでのからっ鳥にも行列ができていました。
900円のから揚げ弁当が作る先から売れていきます。から揚げを揚げるこの手際と音に引きつけられているようです。
当初、調理の様子を見せることにためらっていたご主人ですが、「ありがたいですよね。来ていただけることは。来てもらえるということは、それだけ期待されているわけですからね。」と満面の笑みです。
そしてアップルパイのマミーズでは、パイが無事棚に並びました。斜めの棚が焼きたての湯気と香りを引き立てます。
お客「本当に美味しそうね。驚いたわ。」
地下食料品フロアーのリニューアルの効果で、店全体の一週間の売上は去年に比べて30%増化しました。まずは順調な滑り出しです。
プロジェクトを成功させた宗森さんは、「多く来店されているお客様が、ついつい売り場を見て、商品を見て、買いたくなるということは大いにあると思います。こういう見せて売るかたまりを作ることが大きなポイントで大事なのかと思います。」
番組のエンディングで江口洋介さん
「商品の種類を増やしたり、価格を安くするだけではモノを売るのが難しい時代になってきている。そこでスーパーやデパートが取り入れたのが、製造工程を見せて楽しませるというエンターテイメント性です。しかも製造工程を見せることは、商品への安心感や信頼感にもつながるようです。今後のスーパーやデパートの売り場改革は、まだまだ続いていきそうです。」